*ルーク視点です。





「それがどうした?」



高質な声に、瞼をおそるおそる上げてアッシュを見れば、さっきとは打って変わった表情がそこにあった。

どこか人を馬鹿にしたような冷笑を浮かべている。

「お前はもう俺のもんなんだよ」

「なに…言って……?」

アッシュの言っている事の意味が分からず、問い返すと本当に呆れたような顔をされた。

「教えてやるよ。『ルーク』」

ユリアシティで真実を乱暴に告げてきたアッシュの顔と、今目の前に在るアッシュの顔が重なる。

「お前。ユリアシティで目覚めた時、身体に違和感がなかったか?」

「あった…けど、……それは…超振動で…」

何故知っているのか。浮かぶ筈の疑問を思うことなく、俺は自らの出した結論を述べた。

それに、アッシュの笑みが濃くなる。

「はっ。気付いてて、そんな振る舞いをしていたのか」

どこまでもおめでたい奴だ。と続いた言葉に怒りが込み上げた。

ここで止めておけば良かったのに。短気な俺にはそれが出来なくて。

「なんのこ―――」

「お前と俺は繋がったんだよっ!―――男と女が繋がる方法でな」

真実を、知ってしまった。

いつもよりも数倍饒舌に話すアッシュから語られたものは、俺が身体に感じていた違和を全て裏付ける内容だった。

仲間が、ティアが離れている間に、意識の無い俺を暴いたこと。

行為を知らせる為に、破瓜の証とナカで放った精液が混ざった液体を下着で拭い取ったこと。

気付かなかったが、所有印まで散らされていたこと。

アッシュの口から語られたことは全て現実なのに、受け留め切れずに俺は茫然とした。

夢心地の俺に、アッシュは嘲笑を浮かべながら手を伸ばし、俺の上着を左右に引いた。

力に耐えきれなかった釦が宙を舞う。

「や、やだぁっ―――!!」

それに意識を戻され、蹂躙するアッシュの手から何とか逃れようと俺はもがいた。

穢された記憶はない。だが、俺は穢されたのだろう。

それでもガイへの想いが断ち切れた訳ではなく、必死に抵抗した。

いつまでも大人しくならないそんな俺に、アッシュはとうとう痺れを切らし。



バシン。



振り上げられた手が、俺の頬を打った。

「いまさらなんだよ」

「―――っ!」

俺を取り巻くあらゆる出来事に当てはまる、アッシュのその言葉に最後の力まで奪われた。












2008.5.19