*ガイ視点です。
ルークが明日、レムの塔へ向かうと決めた。つまり、ルークは明日死ぬのだ。
その最後の夜にアッシュはルークのもとへは来なかった。
だが、万全を期して俺は今夜もルークと同室になることを選んだ。
いつもなら、俺達のことをからかってくるアニスの声も、俺とルークが恋仲でも無いのに何故同室で夜を過ごしているのか不思議に思っている、
ティアやナタリアの視線もこの晩は無かった。
赤い瞳だけが何か言いたげに硝子の奥で揺れていたが、気付かない振りをしてルークを連れて部屋へと足を向けた。
確かに俺達は恋仲ではない。でも、確かに思い合っている。その確信がある。
俺はあの夜、ルークの囁きによって彼女の気持ちを知ってしまったから。
ルークは俺と同じ想いを抱いてくれていたのだ。ずっと、ずっと昔から。
それなのに。ルークは他の男に抱かれてしまったのだ。しかも、合意で無いのは明らかで。
心に他人を想いながら、他の男に抱かれることがどれほど辛いことか。
経験が無くとも、容易に想像することが出来る。
俺は馬鹿だ。
ルークの真意を知った後も、何も言えず。今更なことばかりで、言い出すことがどうしても出来ず。
夜、アッシュの呼びかけに応じて、部屋を抜け出して行くルークを止めることも出来なかった。
ルークがアッシュの下へ行くのには、奴に負い目があるからと知っていたのに。
それでも、アッシュに一欠けらでも想いがあるのかもしれない。
多少は情事の快楽を楽しんでいるのかもしれない。
そうルークの気持ちを疑って、止められない自分に言い訳をした。
自分でも思う。最低な奴だと。俺にはアッシュを非難する資格はない。奴以上に酷い事をしているのだから。
ルークの気持ちを知りながら、自分を蝕む行為を受けに行くルークの背を見送っていたのだから。
俺にはルークに想いを伝える資格がないのだ。ルークの想いに応える資格もないのだ。
でも―――
もう遅い事も分かってる。それでも。
今夜だけは、ルークを奴には渡さない。この夜だけはずっと俺の傍に居させる。
何処にもいかせない。誰にも渡さない。
その決意があった。
俯くルークを連れて、俺は今夜の褥となる部屋の重厚な扉を音を立てて開いた。
2008.5.19