※微エロ10題の『甘い悲鳴』の続きです。そちらを先にお読み下さい。
そんなの無理…
事の発端は僅か一時程前のことだと、たどたどしい口調でルークは語り出した。
眠る前に温かい飲料を飲む習慣がある彼女は、其れを貰いに宿屋の食堂を目指し廊下を進んで行っていたそうだ。
その過程で出会ってしまったらしい。性悪軍人の悪魔に。
「美味しいですよ〜?」
「うう……」
目の前に差し出されたのは、蜂蜜がたっぷりと注がれ、カラメルソースが浮かぶ湯気の立つ白い液体。つまりはホットミルクだ。
其れが放つ甘い香りに、食欲が疼くのをルークは感じていた。
蜂蜜入りホットミルクは其の甘味のおかげでルークが好む、唯一の乳製品の食物であった。
幼い頃はよくガイに其れを強張り、寝付く前のお茶の代わりによく飲んでいた。しかし、加齢と共にそれは子供の飲み物という思考に捉われて、
大人ぶって無理に背伸びし、更にプライドの高いルークは進んで欲しいと言えなくなってしまったものであった。
その食物と実に約四年ぶりの再会を果たしたのである。
思わず喉が鳴る。
「ほら。早く決めないと冷めてしまいますよ?」
「うっ…」
確かに選択の時は迫られていた。
平時ならば、言い表せぬ胡散臭さを醸し出すこの男に愛すべき其の飲料を貰わなくとも、
宿屋の食堂でほんの一時の恥を耐えれば難なく其れに再会を果たす事が出来ただろうが、この時間だ。
こんな手の込んだものを注文するのは気が引けるし、実際迷惑であろう。
僅かな時間で選択を迫られる。
怪しいことは解っている。
そう、この上なく怪しいのだ。それでも。
「い、…いただきます……」
ジェイドと遭遇してから僅か五分の後には、ルークの手の中には甘く温かいホットミルクと、其れを楽しむ満面の笑みがあった。
其れは幼い頃に飲んだものと比べて、多少の不思議な苦味を感じたが、不快ではなくむしろ蜂蜜の甘味と良く合い、ルークは満足をしていた。
異変が起きたのはその後間もなくであった。
「はっ、……んぅう…あぁ…」
感じた事の無い、内側からの熱感がじわじわと体内を犯していく様な感覚。
それは自分が触れた事の無いよう箇所にも熱は広がり、其処から知らない液体が滲み出て来るのを感じてルークは恐れ慄いた。
(ど…、どうしよう、どうしよう)
知識が無い事からの恐怖に、眼尻から水が溢れ出す。
不安は更なる混乱を呼び、ルークはどうしていいか、自分がどういう状況にあるか全く理解できなくなってしまった。
そんなとき。
「が、い…」
思い浮かんだのは、自分の心友兼元使用人の存在。
彼は何時も自分の傍に居てくれた。分からない事は全て教えてくれた。彼は己を創ってくれたのだ。ガイならこの熱の正体を明かし、
きっと助けてくれる。
思い至ったら、行動は直ぐだった。
重くなる身体を引きずり熱が籠っている頭を抱え、己の部屋に隣接するガイの部屋へとたどたどしく歩を進め、其の扉に手を掛けた。
辿り着いた其処は無防備にも開錠されており、探し求めた姿は寝台上にあった。
慎重なガイにしては何もかも不自然であったが、自分を取り巻く異常な状態にそんなことは直ぐに脳内から消える。
一刻も早く何とかしたくて、不躾だと思いながらもルークは男の眠る寝台へと歩を進めた。
「が…い?」
歩みを進める中、これだけ近付いてもガイが目覚めぬ事から、彼の身にも何か起きたのではという事が思考を掠める。
其れがルークの歩みを速くさせた。
そして、ガイの傍に駆け寄った際に気が付いた。彼の体の異変を。彼の下半身を覆う布地を押し上げているその存在を。
今回の旅は大変な強行軍であり、野宿も多い。それは長期の野外での生活を意味し、危険を伴う為、当然一人になれる時間は皆無に等しい。
その為、豊かな精力を有する若い体躯は処理を行う事が出来ず、其の身のまま意識を手放した結果だった。
ルークには其れが何なのか解らなかった。しかし、本能は知っていた。
其れが女の身である自身の身体の足りない部分を埋めるものである事を。
意識したらもう止める事は出来なかった。
其れが自身も予想外の破瓜を迎えた状況の原因であった。
「まったく…」
「ごめん、…っほんとうにごめん…ガイぃぃ…」
事の真相を語り終えたルークは、痛みを耐える嗚咽を漏らしながらも謝罪の言葉を紡ぎ続けた。
(ほんとうに…まったく…)
彼女の話す真実は自身に関わる事でなかったら失笑を禁じえないものであった。どこの世界に処女の公爵令嬢が使用人の寝込みを襲い、
其の真意を理解せず破瓜を迎えるのか。
故意に避けていたとはいえ、つくづく知識を与えていなかった事にガイは後悔を覚えずにはいられない。
「俺を起こしてくれていれば…」
「え…?」
俺を起こしてくれてれば、そんなに痛い思いはさせなかったのに。
僅かな沈黙の後に続いったガイの言葉に一瞬の理解の遅れの後、今まで以上にルークの顔が紅潮した。
その言葉の意味は。つまり。
「ルーク。お前、熱を逃がしてくれる相手なら誰でも良かったのか?」
「そ、それは…」
答えは否だった。ルークは自分がいかに鈍感であることを知っていた。だから、気付かなかったのだ。
ガイが自分に向けてくれていた想いも、自分のガイに対する想いにも。
きっとずっと昔からあったその想いに気付いたのは、情けないことについ最近のことであった。
その自覚により、愛しい彼の男が女を欲する様を見て、ガイが自分を欲していると身体がかってに解釈し、
どうしてもあげたくなりあんな体の繋げ方をしてしまったのである。
誰でも良い訳ではない。初めても、その後もずっと他でもないガイが良かった。
ガイだけが欲しかったのである。
「誰でもいい訳じゃない…。ガイが、ガイがいい。ガイが…好きだから」
「ルーク…」
語尾になるほど小さくなり、告白の部分に至っては顔を赤らめ、本当に蚊の鳴く程度の声で紡がれた愛の言葉にガイは生まれて良かったと感じる程の悦びを得た。
その想いに突き動かされ、ルークの半分肌を晒した華奢な身体を引き寄せ強く抱き込んだ。
「ルーク、ルーク!!俺も…好きだ。…愛してる……ずっと、ずっと前から」
「ガイ…!」
胸の高鳴りにか、上擦った声で告げられるガイの言葉にルークもまた大きな幸福を得、ガイの剣士らしく逞しい身体に強くしがみ付いた。
それによって深くなった密着に互いの体温が溶け合う。伝わる熱に、触れる柔肌の感触にガイは新たな欲が生まれたことを自覚した。
どうしても今夜、ルークが欲しい。
ガイは一度腕を緩めると、ルークの顔を覗き込み瞼に口付けを落とす。
それを素直に享受し、頬笑む彼女の顔を通り過ぎ、耳に唇を当て悪戯に囁いた。
「ルーク…ちゃんと、したくない?」
「が、ガイ!?」
何を、とは聞かなくても、状況が状況だけに鈍感なルークにも瞬時に理解することが出来た。
現実にガイが自分を欲している事実を認識し一気に熱が顔に募る。
「俺はルークとしたい。ルークが…欲しいよ」
先程の破瓜で得た痛みに恐怖を覚えない訳ではないけれど。
切なげに寄せられた眉に、行為をしたいと願いながらも己を気遣い、強制を義務付けない声色に、心が奪われた。
「して…?俺を、ガイのものに……」
ガイとなら。そう思えた。
ルークの返事に間を置かず伸ばされてきた、愛しい二本の腕に少女の身体は波打つシーツの海に沈められた。
粘液を啜る水音と女の甲高い声色の僅かな喘ぎが、室内に響く。
寝台の下の床には、脱ぎ捨てられた二人分の衣服が重なり散っていた。
「あ、ああ…がい…やぁ…」
少女が少し目線を下げれば、其処には己に覆い被さり乳房に舌を這わす男の頭があった。
器用にも、舌先を熟れて赤く色付いた果実に絡め、しつこいくらいの愛撫を施している。同時に乳房を両手で揉み上げ、
その弾力を男は楽しんでいた。偶に所有印を散らすことも忘れず、ルークの白い肌には既に幾もの紅い華が咲いていた。
「ルーク…気持ちいい…?」
「やぁ…聞かな、い…でぇ…あ、あぁ…」
完全に感じ入っている様子の彼女にガイは支配欲が満たされるのを感じた。それは、男にとっては快感に繋がるものであり、
素直に反応を示す自身にも伝わる。ぐっと硬度を増した雄が太腿に当たるのを感じ、ガイが己を欲しているのを知り、ルークは羞恥に更に顔を赤らめた。
「ルーク…」
好きな女性の恥じらう姿は、求める男にとっては蜂にとっての蜜と同様のようなもので、
この上ない誘惑であった。そうでないと分かりつつも、どうしても己を誘っているようにしか感じられない。
ただえさえ、ルークが快感に反応し身体が跳ねる度に吸い付く柔肌に自身を擦られ、限界が近くなっているというのに。
どうしても先の行為を欲し、早急にと思ってしまう。
(痛い思いなんて…させたくないのに……)
それでもこれ以上、欲を抑えつけておくのは無理な相談で。
我慢の限界を感じたガイは長く愛撫していた果実から唇を離し、触れるか触れないか微妙な間隔の舌で双丘を辿り、
そのまま腰の曲線に沿い下肢へと降りて行った。
そうしてルークの足首を掴み、細くしなやかな足を不躾に開かせ其処に己の身体を割り込ませ、ルークの意思では閉じられなくしてしまう。
そうして眼前にさらされたのは、まだ本当の意味では男を知らない純真で愛しい蕾だった。
白い内腿には、先程一瞬ガイ自身を受け入れた時に流した破瓜の証が花の様に咲いていた。
「やぁ、嫌だ…ガイ!!そんな…見るなよ…」
「わ、悪い…」
愛しい女性の育った秘部に感動を覚え、ガイは不躾にもまじまじと視線を送ってしまい、それはルークに強い羞恥を感じさせ、
挙句彼女を泣かせてしまった。
「ごめん、ごめんな…ルーク」
(本当にごめん)
恋人に見られただけで泣き出してしまう初心なルークに愛おしさを覚えるが、それでも止めて上げられないこれから成す行為にガイは心の中で謝罪をおくる。
そして。
「感じてれば、いいから……もっと、俺を感じて…?」
「ガイ?や、やめ!あ、ああ、…んぅ、あ!!」
ガイはルークの秘部に顔を埋め与えた愛撫に反応を示していた花芯を舌で嬲りながら、愛液を垂らす膣に一本の指を入れ、徐に解し始めた。
そんなことをされるとは予想だにしていなかったルークの身体が、過ぎた快楽の享受に寝台上に跳ねぎしりと音が発つ。
「あぁ、ああ…んぅ、が、い…がい!」
最早、ルークを支配しているのは思考を融かす甘い感覚のみで。
指から伝う蜜が掌までを濡らすようになった頃、ガイは二本目の指を突きいれ、交わりの様に膣壁を擦り上げた。
「ああ、あああぁ!!」
其れに限界近くにいたルークがそれを迎え、膣筋が強く収縮し内部にあったガイの指に絡み付いた。それに挿入した時の感覚が連想され、
理性という枷が外れるのを男は感じた。
未だ荒く呼吸を繰り返し、過ぎた快楽に眦に涙を浮かべるルークという肢体が欲しくて、欲しくて堪らなくなる。
初めての絶頂を迎えて、脱力している彼女を労わりながらも、ガイはその華奢な身体を引き上げ、自身の足に跨らせる形で座らせた。
「が、い…?」
ガイの成したことが理解出来ず、疑問の視線をおくるルークに答えを与える。
「ルーク…さっきみたいに、俺を迎えて…?」
「え、ええ!?」
告げられた言葉に、霞んだ思考が一気に晴れ、今度は羞恥にルークは混乱の淵に落ちる。
いくら一度は経験したこととはいえ、さっきとは状況が全く異なる。思い出しただけでも顔から火を噴くのに、素面の今、
あんな恥ずかしい事出来る訳がない。
「やぁ…ガイぃ…。そんなの、そんなの無理……で、できない――」
「でも、ルーク。さっきは一気に挿れたから凄く痛かったんだろうけど…本当は女性が上から挿れるのが、初めての娘は一番痛くないんだよ」
この体位での性交が一番苦痛を伴わないと説明するガイの身体は、普段からは考えられない程熱くて。
顔は苦痛を耐えるかの様に情けなく歪められていた。
常時なら見られぬ、愛しい男の其の様に母性本能なるものなのか。とにかくその様なものが擽られ、ルークは全てを抱き締めてあげたくなった。
もちろん自分を欲して、反応している男の証も包み込んであげたかった。それに決心が固まる。
ルークはガイの肩に手を置くと、腰を重そうにゆっくりと上げ、固く反り立ったガイ自身に膣口を宛がう。
思い出す苦痛に一層の恐怖を感じたが、ガイが手を取り指を絡めて握ってくれたことに其れは霧散した。
「愛してるよ…ルーク…」
告げられる想いに、悦びと苦しみを同時に感じながらルークは腰を下した。
「あ、ああ!!…つぅ…が、い!あ!!」
大きな熱の塊から発せられる温度が自分の中に沁みわたる。そんな感じがした。押し入る異物はやっぱり痛くて、
圧迫感に呼吸が辛くなるけど。
「ん、つ…ルーク…ルーク!!」
ガイが名前を呼んでくれるから、大丈夫だと思った。彼をもっと近くに感じる為ならば耐えられる。
ゆっくりと自身を包み込んでゆくことで生じる快感に、優しい感触にガイは涙が零れそうになった。
想いの通じ合った交わりがこんなに気持ち良くて、暖かくて、幸せなものだったなんて思わなかった。
痛みを感じているのか耐える様に眉間を寄せ、涙を零すルークの目元を指先で拭い、唇で吸って愛しさを伝える。
己の為に苦痛を耐えてくれている彼女に、もてる全てを捧げたいと思った。
「が、…いぃ…」
「ルーク…愛してる、愛してる…」
ルークの生み出す温度にガイの発する熱が全て包まれた頃、ルークの呼吸が僅かに穏やかなものとなった。
それを見計らってガイは離さないと言わんばかりに彼女の腰を拭い、恥骨を合わせたまま、その白く華奢な肢体を押し倒す。
そして瞳を逢わし、言葉で伝えられる可能な限りの愛を口にし、言葉に出来ないそれを伝える為に徐に律動し始めた。
「ぃあ、あ、ああ…ん、あ、ああ」
お互いの分泌する液が混ざり合い、音を立てるようになった頃。ルークの痛みによる喘ぎは、やがては女の嬌声へと変わる。
ガイが欲しくて、無意識に雄を締め付ける。それに誘発されるようにガイの腰使いも速く、荒いものになった。
唇を合わせあい、性器を絡め逢わせ、手を握り合う。
それでも完全にひとつになることなど一生出来ない事実に、悲しみを感じながらも、やがて訪れるその瞬間まで、互いに互いを求めあった。
ジェイドの企み?
なんか無駄に長くなったかんじが…(汗)力量不足がみえみえです
2008.1.7