言霊
身体を手に入れながらも、ガイは焦燥を感じ始めていた。
既に其の身はガイの与える快楽に飲まれ、絶対的な支配を受けている。
繋がることで得る、其の甘き蜜のごとくの感覚を一度でも啜れば、気持の良い事に弱い子供は必ず堕ち、
自ら行為を求める筈であった。
だが未だにその兆候が見られたためしは無い。
それどころか求めれば、強い抵抗を示し行為を否定してくる。
結果、自分がルークのその態度に逆上し凌辱することが常の事となっていた。
これでは、何時まで経っても自分の望みは叶えられない。
セックスの気持ち良さは十分に教えた。
事実、快感を与えれば身体は素直に応えるのだ。
だが其れに心の同意が伴わない。
そのルークの態に苛立ちから、思わず乱暴に扱ってしまう。
一度でいい。
今はまだ一回だけいいから。
何故そう願うのかは解らなかったが、ガイはルークからの行為の誘いが欲しかった。
ルークに自分を求めて欲しかった。
貪欲に己を求める姿を見てみたい、そう願った。
「これを使ってみてはいかがですか?」
ルークの剣術の師匠である身分ある筈の男が、下賤の自分に敬いを示す言葉遣いと共に差し出したのは、
華奢な小瓶に詰められている薄薔薇色をした錠剤だった。
「何するんだよっ!!離せっ……んんっぅ!」
太陽が僅かに西に傾く頃に、いつも通りガイはルークの部屋に訪れた。
部屋に入ると間髪置かず、不躾に後ろ手で扉を施錠し、そのまま大窓まで歩み寄りカーテンを引く。
青く棚引く上質の布地から薄暗くなった室内に視線を向けると、恐怖を浮かべ引き攣ったルークの顔が碧眼に映った。
其の身はガイから逃げるように、少しずつ足をずらし後退をしている。
そのルークの行動に無駄なことなのにと、嘲笑を浮かべながらガイは一歩踏み出した。
途端、ガイに背を向け出口へと駈け出した身体をガイは難なく捕えると、悲鳴を上げようと盛大に開かれた唇に噛み付いた。
そうして難なく舌を進入させると、あらかじめ含んでいた錠剤を唾液と共にルークの口内に流し込んだ。
初めて与えた唇への温もりはルークにとってけして甘いものではなかった。
ガイの突然の行いに、何よりキスという今までした事の無い行為にルークは驚き、抵抗を忘れ、
喉を鳴らし其れを飲み込んでしまった。
ルークの喉が上下したのを確認すると、ガイは一度唇を離し、再び違う角度から口付けその甘い口内を貪る。
その間、呼吸法を知らないルークは一度も酸素を得ることが出来ず、
遂には耐えられずその場に崩れるように座り込んでしまった。
「あ、はぁ、あ…な、なに…?」
酸欠により、意識が朦朧としているのは自覚している。
それでも、自身の身体の、常とは異なる変化には気が付くが出来た。
床に身が付いた瞬間、触れた部位から身体の末梢まで伝わる甘い疼きが走った。
強引なガイのキスによって高められた身体の熱も一向に納まる気配が見られない。
それどころか身体の脱力感と共に上昇しているようにさえ感じる。
加えて、これが今最も異常と言える様なのだが、愛撫も受けておらぬのに陰部から勝手に蜜が零れ出し、
湿り気を帯び下着を濡らしているのだ。
いくら快感に慣らされた身体であろうと、ルークの其処は自分から濡れたことなど一度もなかった。
所詮は強姦による性交。
ガイの愛撫にルークの身体が快感をなかなか素直に受け入れることはなかった。
恐怖を感じる行為に当然分泌される愛液は少なく、ガイは雄を受け入れさせる為に、
いつもルークの膣を自身の唾液や精液で濡らし行為を進めていた。
常ならば、ガイ自身で貫かれることにより体が自己防衛の為に膣にぬるみを孕ませる。
それなのに、今自分の身体は先程ガイに受けた口内の愛撫により愛液の分泌を、男を受け入れる準備をしたように感じた。
自分の身体の変化を自覚しながらも、理解することの出来ないルークは縋るような視線をガイに向けた。
呼気が乱れ自身の身体が自由にならないことから不安を浮かべる、ルークの其の頼りの無い様を目にし、
ガイは悠然と笑んだ。
彼女の変化は一目瞭然だった。
異常なまでに呼吸は速くなり、熱に浮かされたように目は水を孕ませ潤んでいる。
その様は、男の劣情を煽るのには充分な色香を漂わせていて。
ガイは今すぐに押し倒したいのを堪え、震え自分を抱き締めるルークの腕を強引に其の身から引き剥がすと、
座り込んでいた身体を引っ張り上げ寝台に座らせた。
そしてガイは上着を脱ぎながら部屋にひとつだけある椅子に腰掛けると、
ただ真っ直ぐルークの情欲の熱に支配されつつある艶姿を眺めた。
そう。ただ、見つめるだけ。
「ん、はぁ…がい…?」
「ルーク様。お昼寝の時間ですよ。また眠れないのですか?寝物語など致しましょうか?」
ルークの疑問を含んだ頼りない問い掛けに、口元だけの笑みを浮かべながらあくまで主人を寝かし付けにきた使用人の言葉を返す。
常ならば、間を置かずに己を暴く手が今日は伸びてこない。
その事実は平穏を望む自分にとっては喜ばしいことの筈なのに。
「が…いぃ…」
いつも忌まわしく感じていた熱が与えられない事に、今は焦れったく思う。
未だ性行為の意味さえも解らないルークにとって、得体の知れないガイとのこの行為に溺れることは最も恐れることであったのに。
その事さえルークは忘れ、今は自分の中に籠る熱に苦しみから解放されたいと望み、
ルークは懇願の意を含む視線をガイに向けた。
目の光を失い、ルークの意識が朦朧としていることが解った。
だが、己から視線を逸らさないことから明らかにその身は自身を望んでいるだろう。
情を孕んだ翠緑玉の瞳が真っ直ぐガイを見据え乞うている。
ガイは鬱蒼と笑んだ。
これこそ自分の求めていたもの。
ルークが己を欲するが故に見せる情欲を秘めた様。
幾度となく網膜の奥で描いたものが今、現実に。
その何と満たされることか。
「これが、欲しいのですか?」
更なる快楽を得るためにガイは動いた。
物欲しげに一心に目を向けているルークに見せつけるように、ガイは下肢を覆う布地の前を寛げる。
そうして露わになった、既に固く反り立つものに口での奉仕を命じる硬質な声を放った。
「舐めろ」
そのガイの言葉にルークはふらつく足を動かせ寝台を降りた。
素足が毛の長い絨毯を踏み締める微かな音と少女の口から零れる荒い吐息だけが静かな部屋に響き渡る。
そうして、それが自然の流れの様にガイの前に膝ま付くと、熱を帯びた肉棒を口に含んだ。
「ん、はぁ…んあ…はぁ…」
「くっ……」
既に育った男根は、膨張しており全てを口に含むことが出来ない。
それを知ったルークは口に入らない部分を左手で扱きながら愛撫を繰り返す。
舌が雄を這う粘着質な水音が鳴り、飲み切れない唾液と先走りの精液がルークの口元から滴りガイの衣服と椅子の天鷲絨が白く汚れていた。
その様の何と煽情的なことか。
ルークが己を慰める其の様を上から見ることに支配欲が満たされる。
上り詰めるその瞬間が見え、ガイは我慢することを止めルークの髪を掴み頭を固定すると激しく腰を揺らした。
「ん、んんぁ…はっ…んぁ、ん!!」
「くぅっ…はっ」
口内の甘い感触を十分に味わった雄が我慢を振り切り絶頂を迎えた。
即座に口内から自身を引き抜き、紅く色付いたルークの頬に白濁を飛ばした。
常ならば悲鳴を上げているであろうところだが、今のルークは怯みもせず、
肌の上に散った白濁を細い指先で拭い取り物欲しげにガイに視線を送り続けている。
機は熟した、というところか。
ガイはそんなルークの様を空色の瞳に映すと鬱蒼と笑んだ。
そうして床に座り込んでいる彼女の身体を掬い上げると、寝台へと向かった。
子どもに与えるにしては大きくて上等過ぎるそれに、躊躇いなく土足で乗り上げ、
ルークを己の膝に座らせ、視線で先の行為を促した。
おかしい。こんなの絶対おかしい。
自分からこんなことをするなんて、絶対にあり得ないことだった筈なのに。
熱に侵された頭を抱えながらも、どこかに在る平静の自分が今の状況を冷静に見ていた。
室内には、膣とそのナカに迎え入れたガイの雄とが奏でる淫猥な水音と自分が動く度に鳴る寝台の音で溢れていた。
口から零れる喘ぎは例により、ガイの大きな手に阻まれ出すことは許されていない。
だがその分、腰の上下運動を激しくさせ、男に快楽を伝えていた。
信じられなかった。自分が、自分がこんなことをするなんて。
だが、現に自分からガイを胎内に向かえ入れ、確かに身体は快楽を得ようと自ら腰を振っている。
「つっ…ん、気持いいか?ルーク」
そしてガイに問いかけられる行為を悦ぶ疑問に頭を縦に振ってしまうのだ。
その素直な答えに良い子だと褒美の様に下からの突き上げが加わり、唇に温もりを与えられる。
言うことを聞かない身体はそれを悦び、ナカにあるガイを締め付ける。
こんな自分知らない、分からない。
「ん…んぅ、んん!!」
過ぎた快楽に、益々思考が霞んでいく中一層強い一突きが一番感じる奥を叩きルークは潮を吹き達した。
同時に強い締め付けに耐えかねたガイも膣内に子種を注ぐ。
その熱が己の内に沁みわたるのを感じながらルークはその瞳を瞼の内へと閉まった。
汚れたものは全てガイの手によって取り変えられ、整えられた寝台には深く身を沈めるルークが横たわっていた。
その瞳は固く閉ざされ、意識が浮上する様子は見られない。
開け放たれた窓から吹き込む、夕暮れの少し冷たい風が紅い髪を揺らすのをガイは感情なく見ていた。
あの一回の情交の後、余程過ぎた快感を得た為かルークは意識を飛ばし、以来一度も目覚めない。
媚薬の効果はけして一回の情事で昇華されるものではないのだが、幼く未熟な身体故か体力が付いてきていないらしい。
本当はまだ物足りなかったが、大切な大切なお嬢様の為に我慢してやることにガイはした。
それにこの行為で得たものは大きい。
ルークは何故自分が行為を助長する行動をとってしまったのか、きっと知らないし、
自分は教えるつもりはないからこれからも知ることはない。
媚薬を使ったということを足しても、ルークが自分からガイを求めたことは揺るぎのない事実。
これでルークは益々自分との行為を拒めなくなり、離れられなくなるのは必須。
全てはガイの計画通りに進んでいた。
媚薬を使っての行為はいつもの威勢の良さがなかったのが物足りないが、従順な彼女の様も十分そそるに値したから、
以後も偶に使ってみるのもいいだろう。
ガイはそう思いながら、手の内にある小瓶を目に入れこれからのことを思い鬱蒼と笑んだ。
内容はドSのはずなのに、微エロ。
最中が上手く書けません。助けて下さい。
というか、久しぶりの裏更新がこれかよ、です。
2008.3.10