今年も桜が満開となるこの季節を迎えた。

その季節の風物詩を楽しむ為に、家族ぐるみの付き合いがある幼馴染の四人の三家族は、毎年三家合同のお花見を行っていた。

だがしかし、今年はお互いの両親が忙しい為、その機会を得られそうもなく。

昨日、今年は中止しようという連絡がルークの母親から入ったばかりだった。

毎年それを楽しみにしていたルークは当然のようにごねて。

その被害に一番合うのは、やはり恋人のガイであった。

一緒にいても始終膨れ面で、碌に触れさせてもくれなくなり、名前を呼んでも返事もしない。

ルークの機嫌を何とか直したいと願い、ガイは休日を明日に控えた今日、大学が終わった後ルークをドライブに誘った。







夜桜







「どこに行くんだよ…」

「いいところ、だよ」

行き先を告げないガイの態度にルークは眉を寄せる。既に車はルークの全く知らない道を走っていた。

見たことのない景色から決して近場ではないことが窺える。

西の空は既に茜色に染まっている。時刻はもう夕べになりつつあるのだ。

こんな遅くに自分を連れ出して遠出するとは。一体、ガイは自分をどこに連れて行くつもりなのか。

ルークの中でガイに対する疑心がどんどん大きくなっていく。

まさか、以前のように如何わしいところに連れ込む気なのではないか。

そんな疑いすら芽生え始めていた。





『以前』とは、初デートの日のことだった。

朝早くから、自宅から少し離れた遊園地へ赴き、一通りのデートコースを満喫した後。

疲れ切り、車内で眠ってしまった自分をこともあろうか、ガイはラブホテルに連れ込んだのだ。

あらゆる事故が重なってのことだと、あらゆる言い訳を聞き結局は許し、身を重ねたのだが。

あれは騙し討ちに近いと、今でも内心ルークは憤っていた。







車はどんどん山奥へと入っていっているようだった。

自然に街灯は減り、車窓から見える景色は闇一色になりつつある。

そしてやがて、辺りを照らすものはガイの運転するこの車のライトのみとなった。

「ガイ…どこに、行くの…?」

「もうすぐ分かるよ」

流石に心細くなりルークは頼りない声色でガイに再び疑問を振ってみる。

しかし、ガイは曖昧な答えを返すのみであった。

それが冷たい態度に感じ、きっとガイは怒っているのだとルークは思った。

自分の素気ない素振りがガイの気に障ったに違いない。つまり自分が招いたこと。全て己が悪いのだ。

好いた人にこんな態度を取られる哀しみを知り、ずっとこんな思いをしていたであろうガイに罪悪感が込み上げる。

ここは自分が謝るべきだと口を開いた際。



「ほら、着いた」



ガイが先に口をきき、ルークは喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。

「え…?」

碧眼に促され、視線を窓の外に向けると其処には。

「わぁ…!!綺麗!」

先程まで闇しか見えなかった空間に舞っていたのは、白い花弁。

それは車のライトに当たり、幻想的に光りながら地に落ちていく。

少し広い道まで来ると、ガイは道の脇に車を止め降りると、ルークの座る助手席の扉を開けてやる。

「すごいっ!すごいっ!!」

ガイに手を取られ、導かれた場所には数十本の桜の木々が植えられ、桜の並木通りになっていた。

ここまで見事に咲き誇る場所をルークは今までに見たことがなかった。今まで家族で訪れたどんな場所のものよりも美しい。

しかも見渡す限り桜があるにも関らず、人の気配は皆無である。

「穴場なんだ」

花見の名所となってもおかしくないのに。と、ガイに疑問を振れば、あまり人に知られていない場所だと教えられた。

散り際なこともあって、四月中旬ともなれば訪れる人はまずいないという。

自分も友人に聞くまで知らなかったとガイは笑った。その言葉は自分の為にこの場所を探してくれたことを表わしていた。

ガイの照れる姿にルークの胸が高鳴る。

赤らんだ頬を誤魔化す様に再びルークは桜を顧み、その美しさに浸った。

見頃を終えたといっても、樹はまだまだ豊かに花を付けているし、散り風に舞う花弁は雪の様に綺麗だった。

「とっても綺麗だ……。ありがとう、ガイ」

舞い散る桜と戯れるルークの姿を目に映しながら、ガイは暫く見惚れていた。





















「楽しんでくれた?」

「うんっ!すごく綺麗だった!!ありがとうな、ガイ」

満面の笑みに、「お姫様に悦んでもらえて光栄の極みです」と茶化した言葉をガイは発し、それにルークが青筋を立てる。

「歯が浮くようなこと言ってんじゃねぇ!」

「本心だよ、俺のお姫様―――――って、痛っ!」

続く言葉に羞恥と怒りが込み上げてきたルークの左腕が振り上げられ、油断し切ったガイの頬に見事に当たった。

「いってぇ………このぉ!」

左ストレートを綺麗に決められたガイは少しの間身悶えた後、反撃にルークが最も苦手とする擽り攻撃を仕掛ける。

「ぎゃっ…どこ触って…あは…ははは、ちょっやめっ…ガイのスケベ大魔王!!」

溜らず、腋を擽るガイの腕を押し返そうと試みるが敵わず、ルークは暫く擽り攻撃を受けた。

そのじゃれ合いは暫く続けられた。





やがて、二人の口から零れる言葉が途切れ途切れとなり、辺りに再び静寂が訪れる。

「ルーク…」

途切れたガイの笑い声を不思議に思い、抱えた腹から視線を上げれば真剣な眼差しとぶつかった。

なんとなく雰囲気を感じ取り、未だ慣れないその空気にルークは身を強張らせる。

「ガイ……――――ふっ…ん」

そんなルークを落ち着かせるように、ガイは薄い背に腕を廻し、左手で頬を包み込み啄む口付けを贈る。

それは次第に唇に吸い付くものに変わり、遂には舌が差し込まれた。

「んっ…あ、ふっ…ん…」

口内を深く犯し絡み付いてきたガイの舌に、ルークは必死に応えた。

飲み切れない注がれた唾液と共に、ちゅく、ちゅくと水音が互いの口腔から零れ落ちる。

一通り唇を味わいガイが開放した頃には、ルークの身体からはすっかり力が抜け切り、ガイに身を寄せ何とか座位を保っていた。

「ルーク…?」

やり過ぎたかと反省し、労わりを含んでルークの名を呼べば、視線だけを向けられる。

そのルークの様にガイは思わず喉を鳴らした。

唾液に濡れた唇は真紅に染まり、上気した顔は艶めかしくガイの動悸を速める。

多分己の気のせいなのだが、煽られているように感じ、ここで止めておこうと思っていた気が一気に薄れた。

変わりに新たな欲が沸々と湧き上がってくる。

止められない。

そう自覚した瞬間、ガイは行動を起こした。

酸欠により茫然としているルークの足元に手を伸ばし靴を脱がせる。

そして腋に手を差し込んでルークを自分がいる運転席に引っ張り上げ、対面するように膝に座らせた。

「ガイっ!」

あまりに恥ずかしい体位にルークが声を荒げる。

それを制するように、ガイは自分の目線の少し上にあるルークの顔を捕え、再び唇を塞いだ。

「ここじゃ、駄目か…?今すぐ、ルークが欲しいんだ…」

「お、おま…!」

この場を褥にして自分を抱きたいと告げてきたガイに、返す言葉が見つからずルークは口を魚のようにぱくぱくさせる。

瞬時に罵りを口にしようとしたのだが、情欲に濡れたガイの瞳が切なげで。いつも以上に綺麗で。

思わず愛おしく感じてしまった。

「だ、だって…明るいし……人に見られる…」

ガイの車は後部座席にしかスモークが貼られておらず、前方からは車内が丸見えだ。

加えてここは野外。いくら人通りがないこの場所でも、いつ人が来るか分からない。

車の中は外界から隔離された空間といえど、いわば解放された密室なのだ。

愛し合う行為を他者に見せる趣味などルークにはない。

「これでいいか?」

最後の悪足掻きの様で、それでいて正論であるルークの言い分を聞き、ガイが即座に手を打つ。

車に備え付けられている、スイッチに手を伸ばしそれを押した。

瞬間、煌々と桜を照らしていた車のライトが消え、辺りが闇色に染まった。

これで車内はおろか車でさえ、他者が見るのは難しくなったのは明らかであった。

更に今日は新月であり、最後の明かりとなる夜空を照らす無数の星々は、お互いの姿を薄らと眼に映す丁度いい暗照明になっている。

「いいな…?」

「う、…うん……」

反論出来ない状況に追いやられ、ルークは仕方なくもガイを許した。









「ふっ…んぁ…んっ…」

唇を何度も合わせながら、ガイはルークの背に廻した手で服越しにも関わらず、器用に下着のホックを外した。

そうして服の裾から利き手を差し入れ、ブラジャーを押し上げ解放された愛らしい膨らみに直に触れた。

やわやわと揉み上げその感触を十分に楽しむ。

存在を主張するように固く立った頂きを摘んだり、指先で押し潰せばルークが快楽に声を上げた。

なんて柔らかいんだろう。ガイの感嘆の溜息とルークの快感を押し殺した息が重なる。

「やぁ…ガ、イ…やめっ…あ、ああ…」

既に下着が滑めついた液体を吸い、濡れていることがルークは分かっていた。

今日が久しぶりなのが悪いのか。

まだ片手で足りる程の経験しかない筈なのに、こんなに敏感に反応してしまう自分が恨めしかった。



(違う…全部ガイのせい……)



僅かに残る理性に、ルークはガイに責任転嫁をする。

まだ中学生だった自分を強姦し、無理矢理身体を開いたのはガイだ。あの時ほど絶望を感じたことはなかった。

当初、もうガイになんか二度と会いたくないと思って距離をおいて、何度もガイを拒んだ。

だがガイから離れて初めて、彼の存在の大きさを知り、自分をどれだけ想っていてくれたかが分かった。

そして、いつの間にかガイの初めてが自分であることに悦んでいることにルークは気が付いた。

いつの間にか、愛してしまっていたのだ。

結局は、惚れた者が負け。想いを自覚した翌日に、晴れて二人は恋人同士になった。

以来、何度か求められて交わって来た。

しかし、自分はまだ高校生なのだからもう少し節度ある振る舞いを願ったが、そんなもの愛の前では風前の灯火らしい。





「集中しろよ…」

と、ルークがそんなことを考えていたのはほんの一瞬だったにも関らず、ガイは気付いていたらしい。

顎を捕え、ルークの意識を奪う為に貪るように深く口付ける。

「あ、ん――」

強引なそれに不満を持ったが、行為の最中に気を逸らしていたのは自分だ。

悪いと思いルークは素直に謝ったのだが。

「だめ。許さない」

両手でルークの胸を弄びながら、ガイは視線だけを巡らせて上目使いに一蹴した。

普段見られないガイの意地悪な様が、どうにも艶めかしく感じて思わず見惚れてしまった。

それの誤魔化しも兼ねて、ルークは慌てて言葉を返す。

「はぁ…ん、じゃあ…どうしたら…許して、くれるんだ…?」

「そうだな…」

暫く思案した後、ガイは下肢を覆うスラックスの前を寛げ、下着の合わせから既に勃ち上がっている雄を取り出した。

初心なルークにはとてもじゃないが直視出来ず、不自然な動作で目を逸らす。

「ルークの手で、可愛がって?」

告げられた命に言葉にならなかった吐息が出る。

「なっ…」

「嫌?」

ガイも強要はしたくないのだが、どうしても懇願めいた声色になってしまった問い掛けに、ガイは自分の余裕のなさを知り心内で嘲た。

どこか情けなくも愛しい表情をしているガイについにルークは折れた。

恐る恐る反り立つそれに触れ、指を絡め、たどたどしく扱き上げる。

「んっ…はぁ、気持ちいい…」

柔肌の感触にガイが反応し息を荒げ、色を含んだ声を零し快感を伝えてくる。

羞恥を感じながらも、雄が自分の手によって育つことが嬉しくて。

胎の奥がじんと痺れ、ルークは知らず腰を揺らしていた。

「ルークのここも準備ができてるみたいだし…そろそろいいか…?」

雄を愛することにルークが夢中になっている隙に、ガイは指を忍ばせ下着を除けルークの秘部に差し込んだ。

「きゃあ…!」

そのまま犯す様に動かせば、嬌声と共に蜜壺と化した膣から厭らしい水音が零れる。

其処は解す必要がないほどに蕩け、足りないと云わんばかりにガイの指を締め付けてきた。

挿入した時の快楽を想像させるそれに突き動かされ、ガイは繋がる為に動き出した。

快楽に悶え喉を晒し、ルークが腰を浮かせた隙に濡れた下着を足から抜き取る。そして眼前に現れたそれに焦らす様に自身を擦りつけた。

「あっ…」

「欲しい?」

伝わる熱を欲し、ルークは素直に頷く。

「じゃあ、最後の命令」

「…」

この上まだ何を望むのかと顰め面をルークは作ったが、笑みを濃くするだけのガイに避けられないことを知り、無言で先を促す。

「ゴム、とって」

なんてことを女である自分に頼むのか。瞬間、殴ってやろうと手が伸びかけた。

だが、必要なことではあるので、ルークは大人しく指し示されたダッシュボードから避妊具を取り出した。

「はい……」

その中から一つを切り離し、羞恥に耐えながらガイに差し出す。が、一向に受け取る手が伸びて来ない。

「ガイ…?」

怪訝に思い、逸らした視線を戻せばそこには意地の悪い笑みを携えたガイがいて。

「じゃあ、それ俺のに着けて?」

「なっ…なに言って…」

自分はまだ片手で数える程しか経験がなくて。ガイ自身にまともに触れたのも、今日が初めてなのに。

「ルークが着けてくれないと、いつまでもこのままだよ」

普段は蕩けるくらい甘く優しいのに、どうして情事の際はこんなにも意地悪なのか。

いっそこのまま行為を止めようかと思ったが、身体はルークの意思に反し、今も蜜を零して続けてガイを欲しがっている。

高められた体を走る疼きは、自力で鎮まりそうにない。

「馬鹿ガイっ………」

荒げた声で罵りを一つ発した後、ルークは意を決し封を切った。

高校の保健体育の授業で習った通りに、精液溜まりを傷付けないように摘み、丁寧に被せていく。

ルークのどこか幼さの漂う手付きに、ガイはいけない事をしている気がした。

だが、それは理性を働かせるどころか、寧ろ行為を助長させることをガイに思わせる。危ない奴だと自分でも思った。

「良く出来ました」

装着させた後、拗ねたように顔を背けたルークの頬に口付けを贈り、労わりを含んで頭を撫ぜる。

このガイの行為が大好きなルークは多少機嫌を直し、ガイに向き直った。

未だ緊張の解けない硬い表情のルークに優しく微笑みながら、下ろされた手を取り、腰を上げるように促した。





「あ、あっ…痛ぁ、んぁ、ああっ!」

蜜を垂らす蕾に雄を宛がい、膣に入るか入らないような浅い抽送を幾度か繰り返した直後、ガイは一揆にずぶずぶと雄をルークに埋め込んだ。

くちゅりと膣と雄が擦れた音が響いた後、内壁を擦り上げ、ルークのイイところを擦って最奥に到達する。

「んはっ…あ、あ、あぁ!が、い…あっ!」

慣れない圧迫感と痛みに呻く、ルークを気遣いながらもナカが施す快感に耐えられず、ガイは早急に下から緩く突き上げ始める。

「ルークっ…ルークも動いてっ……」

動いて欲しいと乞われたルークもガイの肩に?まり腰を動かした。

激しくなる揺さ振りと共に、ぐちゅぐちゅと結合部からの音も大きくなる。

ガイによって掻き回され、納まり切らない愛液が膣から漏れ出し、ガイの下肢を汚した。

「ん…やぁ…嫌だ…んぅ、あ、やぁ、ああ…」

辺りが静寂なだけに、響く自分の声が気になるのか。ルークは肩に掛けた手を外し、口元を押さえていた。

「ん…声…我慢するなよ…もっと、聞きたい…」

情欲を煽る、あの甘い声を抑えさせるのは勿体無い。そう思い、ガイは細い手首を掴み取り、ルークのイイところを重点に突き上げ続けた。

「あ、あ、ああっ…ん、もぅっ、あ、だめぇっ!!」

自身を締め付ける蜜壺の動きに、訴える声にルークの限界を知り、ガイはルークの腰を掬い取る。

そうして抱き上げると、瞬時に場所を入れ替えルークを自分の下に組み敷いた。

やや斜め上の位置からルークを突き上げながら、上肢を覆う邪魔な衣服をたくし上げ現れた胸を口に含み愛し、華を散らし行為の痕を遺してゆく。

「あ、が、いっ!こわれちゃ…ああああぁっ!!」

「くっ…はぁ…」

強い一突きに奥を突かれ、抗えない量の快感に、ルークは身を震わせイった。

直後、強く締め付けられたガイも低く呻き、コンドームの中に吐精する。

細かに腰を揺することから、ガイもイったことを知ったが、身体の奥に熱を感じないことにルークは物足りなさを覚えた。







「ん…ねぇ、ガイ……」

「うん?」

全てを出し切り、ナカから自身を引き抜き、キスを贈りながら後処理に勤しむガイの耳元にルークは唇を寄せる。

顔を真っ赤にしてぼそぼそ囁かれた内容に、一瞬驚きにガイは目を見開くもすぐに優しく笑んだ。

同意の触れるだけのキスをルークに施した後。

ガイは自分のコートを半裸のルークに纏わせ、処理もそこそこにエンジンを掛ける。

















『まだ…足りない…。中にガイが欲しい…』





舞い散り、降り積もった桜の花弁を振り切るようにして、車は闇の中へ消え去った。











幼馴染4人とはガイ・ルーク・アッシュ・ナタリアのことです。マリィさんは年が離れているので(汗)
皆のお姉ちゃん、みたいな(笑)FF8のエルオーネみたいなかんじで(古?)

最後の言葉は、ルークはピルを飲んでいるので、中○し大丈夫とガイに言ったのですよ。
↑とか、避○具が直接的表現ですいません。

2008.4.14