「ルーク、迎えに来たよ」
闇が空を占める中、何時ものように窓からの訪問を行った親友を部屋に招き入れた直後、
彼によって口元に押し当てられた布地から香る匂いに、ルークは急速な意識の混濁を覚え、
そのまま其れを手放した。
唯一垣間見た、親友である男、ガイの只只綺麗な笑みだけが記憶に根付いていた。
世界で唯ひとり君を愛す 1
今夜、長い年月欲して来たものが漸く手に入る。
月を覆っていた暗雲が晴れ、その白く淡い光が室内に在る唯一の窓から入り込み、愛おし
い其れがガイの視界に入った。
優しい朱が思考を占める。
それだけで身体に走る快感を覚え、ガイは鬱蒼と笑んだ。
己の思考を染めるだけでこれ程の快楽を与えてくれる。
そんな彼女に触れたらどうなるのだろう。
交わったら一体どうなってしまうのか。
想像するだけで自然と息が上がる。
其の感情に突き動かされる形で、ガイは彼女の、ルークの居る寝台へと歩を進めた。
ぎしり、と華美では無いが其れなりに高価な寝台が二人分の重みに乾いた音を発てた。
が、其れは既にガイの耳には届いておらず、誰の気にも留められない。
ただ、眼下の純白の布に映える朱金だけがこの場で唯一つ、音色を奏でていた。
ガイは其の衣擦れの音が己に贈られる夜曲の様だと錯覚し、思わず、滑らかな肌に、唇に
手を伸ばし触れた。
「ん……」
触覚で優しい柔らかな感覚を味わう。
攫う際に嗅がせた薬品がまだ効いているようで、ルークの唇から零れ落ちたのは不随意な
喘ぎと取れる吐息だった。
抑えが利かず其れを合図に、か細く華奢な体躯を掻き抱く。
途端、伝わる温度に己の雄が湧き上がるのをガイは感じた。
ルークが纏う薄布を丁寧に、だが性急にひとつ残らず取り払う。
そうして眼前に晒されたのは、生まれたままの姿の愛しい少女だった。
「っ……、きれい、だ…」
呼吸が荒く乱れる中、自然と賛美の言の葉が零れ落ちる。
ルークの中に入りたい。
繋がりたい。
一つになりたい。
そのまま、溶け合いたい。
其の想いに、己の欲望に突き動かされてガイは未だ意識の無いルークを組み敷き、本懐を
遂げる為、愛撫を施し始めた。
淡い桜色の唇に己の其れを合わせ、触れるだけの口付けを贈りながら、未発達の乳房に手を這わす。
「んっ、……はぁ、ん」
零れる随意では無い喘ぎに、どうしようもない衝動が走る。
我慢出来ず、ガイは己の衣服も取り払うと肌を合わせ、体温を共有した。
嘗てない、安心感と充足感を得る。
己の手に吸い付く肌に感動を覚えながら胸を優しく揉み解し、存在を主張し始めた突起を
其の形の良い唇で挟み込むと、口内でしつこく犯す。
意識の無いルークの荒くなる呼気を頭上に感じ、一度其の身を離した。
「ルーク…?」
瞳に映ったのは、しっとりと汗ばみ桜色に染まった身体。
荒く、少し早くなった呼吸を繰り返す紅く色付いた唇。
その表情は、苦しげに、だが艶やかに輝いていた。
喉が渇く。
己の体の疼きが一層強くなる。
早く、早く。
「あっ……んぅ、ん…はぁ、あぁ、ん…」
逸る想いに無意識に、ガイはまだ誰も触れたことの無いルークの下肢に指を這わした。
既に僅かに溢れていた愛液を指先で掬い取ると、悪戯に突起に擦りつける。
途端、零れる艶やかな女の喘ぎに理性など脆く崩れ去っていった。
「んん、やぁ…い、たぁ…あ」
己の中の男の欲望。
本能とも言える其れに従い、ガイは這わせていた指を未開の膣に入れた。
浅めの抽送に走る痛みに、夢現のルークが僅かに悲鳴を上げる。
其れに愉悦を感じ、ガイは指で僅かに慣らした後、既に痛い程に張りつめた自身をルーク
の秘部に宛がった。
「ルーク…この日が来るのを、俺がどれほど待ち遠しかったか解るか?お前が女になる日
は、お前が俺のものになる日だ。ずっと昔から決めていたんだ」
まるで寝物語でも聞かせるかのように滑らかに、綺麗にガイは未だ意識が深淵に在るルー
クに語りかけながら、細腰を掴む力を強める。
「愛してるよ…ルーク」
うっとりとした、酔った様な声色で愛を囁くと、ガイは利き手で支えた雄々しく上向く己
の性器でルークを貫いた。
「きゃあああああああ!!いた、い、痛い!」
感じたことの無い激痛を予想外の個所から感じ取り、薬品による眠りの完全な覚醒を促され、
ルークは零れんばかりに翡翠の緑眼を見開き、涙を零し、布を引き裂くような悲鳴を上げた。
「っ!!きつ……。るーく、起きた?…すぐに、良くなるからっ…はぁ。少し、我慢して…、んっ」
ルークの覚醒の反動に、処女の締め付けがきつくなり、ガイが痛みを伴う快感に低い呻きを零す。
が、奪う側である己の痛みなど、奪われる側の彼女に比べれば大した事では無いのだろう。
己の体の下で、震えが止まらぬ愛しく細い肢体の痛々しい様を眼に入れながら、早く快感
を感じさせてあげたくて、ガイはルークを強く抱き締め、腰を打ち付けた。
自分の身に何が起きているのか。
下肢を襲う痛みは、今までの生の中で感じた事の無い種のものであった。
ルークは全く解せず、苦痛が占める脳内に、唯一よく知る声が届く。
定まらぬ視線を無理矢理に逢わせる。
途端視界を占めたのは、自らが兄の様に慕っている使用人兼親友の、快楽に歪んだ余裕の
無い艶やかな表情であった。
自らがこの世で最も信頼を置く男が何故自分に苦痛を与えているのか。
というか、ガイに施されている、この耐えがたい痛みを伴う行為が一体何なのか。
全く解らない。
かといって、知りたくない。
そんな解せぬ、相反する感情が顔に出ていたのだろうか。
答えはあっさりとガイから得られた。
「ルー、ク?分らないか。そっ、か。ん…はぁ、お嬢様は知らない、よな?」
視線が合うと、ガイは一度律動を中断し身体を隙間無く合わせ、ルークの耳元で優しく囁く。
「俺達は今、愛し合う行為をしているんだよ。好き合った二人が愛を確かめる為、其の証
を作り、遺す行為を」
「が、い?痛っ…!そ…れって……!!」
比喩を使い遠まわしな表現で、さも綺麗なものの様にガイはルークに教えながらガイは緩
い律動を再開する。
そんな曖昧なものでも、ルークには伝わった。
知ってしまった。
先日大人の女性の身体に成り、家庭教師から知らされたこの世の真実のひとつ。
永遠を誓い、愛し合う二人の合意の上での行為ならば、恥ずべき事の無い美しく、悦に満
ちたものであろう。
だが今ガイが施している行為にルークは同意した覚えは無い。
一方的に奪われた事実に、双眼から止め処なく涙が溢れた。
確かにガイのことは好きだ。
しかし未だ性に対する心的な開花の無いルークにとって、其の想いは親愛を超える事は無かった。
つまりは異性に対する愛情をルークはガイに抱いては無い。
それなのにガイは何故自分にこんな事を、互いに愛し合う男女がすべき行いを施すのか。
混乱の極みにルークは落ちる。
だがやがて、漸く其の矛盾を感じ取り、ルークは碌に動かぬ腕を振り上げ己に楔を打ち付
けるガイに抵抗し始めた。
「んあっ、やぁ…いやぁあ!!が、い…やめっ。あ、あぁ、ん!」
「るー、く…暴れるっ、なよ…。薬、使いたくないんだ…。初めて、は、自然な形がいい
だろ…?はぁ…ん、俺で、気持ち良くなって、欲しいんだよ…、っつ!」
激しく揺れるガイの腰使いから逃げる様にルークは身を捻り、なんとか己の中からガイの
性器を抜こうと試みる。
だが成人した男の力に少女が敵う筈も無く、抵抗を示した腕は呆気なく捕まり片手で寝台
に縫い留められ、捩った腰はガイの空いた方の手で固定されてしまった。
挿入の深さが増し、子宮の入り口にガイの猛った彼自身があたる。
其れに今まで感じた事のない、痛感以外の感覚が湧き上がるのをルークは感じ取り、思わ
ず体の力が抜けた。
「ああぁぁ!!」
瞬間、脱力した事で敏感になった体躯が、激しい甘い痺れを感じ取り抑えられぬ甲高い嬌
声がルークの唇から発せられた。
異変を自覚し再度身を固くしようと試みるが一度感じ取ってしまった性感を、無視するこ
とが出来ずルークは思考が霞むのを感じた。
このまま流されてはいけない。
この快楽に流されてはもう二度と、ガイとの行為を拒むことが出来なくなる。
そう本能的に理解しながらもルークの身体は素直に開花を悦び、やがてはより快感を貪ろ
うとガイの動きに合わせて無意識に自ら腰を振るようになっていた。
其の瞳には最早行為の否定の色は無く、感じ入った女の艶を秘めていた。
堕ちた。
そう確信を得たガイはルークに気付かれぬよう口角を持ち上げ、更なる快感を与える為に
放られていた乳房の頂を舌先で転がし、陰核を弄ぶりながら律動を速めた。
「ん、ああっ!!はぁ、ん…あ、あ、あぁ…がぁ、い!!」
「っん…い、いよ…ルーク…。きもちい、い…んぁ、はあ…」
余裕なさげに喘ぎながらも今や快楽に落ちたルークに絶頂を促し、律動を繰り返すガイの
汗がルークの腹部に、胸元に散る。
其れにガイは多大な愉悦を感じた。
目に入れ確かめる事は出来ないが、今、正にこの瞬間彼女の中にある自身は間違い無く耐
えきれない先走りの精液を零し、ルークの内を侵しているのであろう。
自分の体液で、自身で、愛しいものを自分色に染め上げる感覚。
ガイは嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。
快感に反応し、時折締め付けて来る柔らかい内壁に限界を感じ、ガイは自身をぎりぎりま
で引き抜くと、内壁を抉るように叩きつけた。
「ああああぁ!!」
「くっ…!」
達したことでルークが意識を飛ばすのと同時に、男性器を隙間無く包み込む膣が収縮し、
内に在るガイを強く締め付ける。
其の命の生産を促す反射に従い、ガイはルークの中に欲を放った。
意識を失いながらも、自らの胎内の奥深くに散る熱い飛沫を感じ取ったのか、紅く色付い
たルークの唇からは不随意的な喘ぎに「あつい」という言葉が混じる。
この上ない愉悦と至福を感じ、充足を得る。
未だ精を零す自身をガイはルークの柔らかい内壁に擦りつける様に腰を揺らし、其の放出
を補助し、余す事無く注ぎ込む。
たった今ルークの中に植え付けた何億という種の一つだけでいい。
漸く全て植え付け終えたガイは、萎えた性器をルークの膣から引き抜く。
同時に奥深くに放たれた白濁が僅かに零れ出した。
其れを見つめながらルークの平たい下腹部を愛しむ様に撫で上げながら、ガイは膿んだ様に笑んだ。
「今はゆっくり眠れ」
ルークの中に植え付けた何億という種の一つだけでいい。
願わくはルークの中に根付き、発芽することを。
愛しいルークの永遠を手にする為に。

すみません。すみません。
世界中に謝ります。
ブラウザバックでお戻り下さい。
2007.12.31