此の内に在るのは決して偽りの想いでは無い。

そう、確かに自分は彼を愛している。


友愛という名の愛を確かに抱いている。



ただ其れが彼の求める愛で無いだけ。



身体は彼に捧げた。




だが心は。





世界で唯ひとり君を愛す 3





「はぁ…んっ、あぁ、あん…やぁ」

己の口から発せられる声だとは未だ信じられぬ喘ぎが自然と零れる。

背後からは犯す男の獣染みた早い呼気が聞こえていた。

男の激しい腰使いから、寝台の天蓋が揺れ、ぎしりと音を発していた。

艶を帯びた吐息の様な嬌声と、無機で乾いた音。

其れだけが今この空間を占めていた。





一体何時までこんな生活が続くのであろう。





与えられる快楽に霞む思考の中、ルークはぼんやりと考えた。

今も尚自身を犯し続ける男、ガイに初めて蹂躙された夜からこの行為は必然の

様に繰り返されている。

初めて身を結ばれた翌日は、無理な行為が祟り、発熱し意識が朦朧としていた。

ガイは予告通り、其の日は手を出さず甲斐甲斐しく自分の看病をしていたらしい。

其の間にどうやら移送されたらしく、次に眼が覚めた時にルークの眼に入った

景色は異なるものであった。

天蓋に赤い絹の布地を使用した華美な寝台。

宝飾物の詰められた鏡台。

どれも高価と見受けられる衣服が入った箪笥。

極めつけは天蓋と同様の素材の絹を使った布地で縁どられている金細工が施された扉や窓枠。

其の窓の外には鉄格子越しに、眼下遥か下に深い蒼の水を張る海が垣間見えた。




初夜を迎えた部屋とは相反する様な、豪奢な造りの部屋。




此の屋敷はガイの話から察するに、彼の屋敷であるようであった。

使用人という身分の人間が持ち合わせるというには華美過ぎる。

其の事でさえ、混乱の淵にあるルークの思考では思い当たることが出来なかった。

与えられた場で生きる。

其れが精一杯であった。






今ルークが身を置くこの部屋にガイは不定期に訪れ、昼夜を問わず彼女を抱いた。





一体何時までこんな生活が続くのか。





先程自身の内に問いかけたものをルークは再度問う。

ガイが求める度に全身を使い抵抗して来たが、自分の力が彼に敵う筈もなく、

毎度組み敷かれてきた。

其の度に強姦まがいの性交を交わし、ガイの精を注がれる。

どうやっても敵わない。

其の現実を突き付けられ続けた結果、媚はしないものの、何時しか行為への抵

抗も諦め、受け入れるような形になってしまっていた。

このまま自分はどうなってしまうのだろう。

拭い切れぬ不安が心内、思考を占めて行く。

心を捨ててしまえば楽になれるのであろうか。

しかしまだ胸の内に残る、ガイへの信頼の念が、故郷、家族への想いが其れを阻んだ。




激しくなる律動の中、最悪の結末しか予想されぬ現状を省みながら、ガイの強

い一突きでルークの思考は白んでいった。


















泣き腫らした重い瞼を上げると、既にガイは去った後のようだった。

其れに僅かな安堵と一末の寂しさを感じる。

正確な時は遠に分らないが、此処に連れて来られてもう二か月は経っているであろう。

その間、逢い見えた人間はガイ一人であった。

たとえ己を犯す者であろうと、この状況下では其の体温に安心を覚える。

其のちぐはぐな己の思考に思わず嘲笑が零れた。







堕ちたものだ。






自分以外の気配が無い事を確認すると、ルークは重い上体をゆっくりと持ち上げた。

「……っ!!」

途端、下肢にぬるりとした液体が伝うのを感じる。

目をやらなくても其れが何かをルークは解していた。

ガイが先程自分に植え付けた、ガイの拘束の証。

己を狂わす肉棒により身体の奥深くに打たれた、契の証。

ルークは内腿を伝う白濁を指先で掬い取り、眼前に晒した。

白銀の月光だけが部屋を満たす中、其の液体が妖しく白く光る。



彼は何を想い自分に此れを注ぎ続けるのか。

彼の求める愛とは何なのか。

こんな仕打ちを受けたのに、自分は何故今尚、彼に憎悪の念を抱く事が出来ないのか。

何も解せぬままルークは顔を上げ己を照らす月と目線を合わす。

濁った緑眼では輝く其れも満足に映せぬのか。

脳が意識した景色は薄ぼんやりとした、歪んだ曲線の象であった。

頬に生温い水が伝うのを感じながらも其れを意識せず、ルークは無意識に下腹

部を利き手で擦る。

熱い何かがゆっくりと胎内を侵し始めていた。






其の事実をルークはまだ解さぬまま、月だけを見ていた。

















なんか話の方向性が分らなく…ι
というかガイが何を考えているか分らなく。
どうしよう?
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2007.12.31